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バイデン政権の米司法省、シルクロード押収ビットコイン1兆円相当の売却許可を最高裁が正式承認─トランプ新政権の「国家備蓄」構想と真っ向対立か

2025年1月9日、米国司法省が2014年に閉鎖された闇サイト「シルクロード」から押収した合計69,370ビットコイン(日本円換算で約1兆円相当)の売却について、最高裁判所が正式に許可を与えたことが明らかになりました。バイデン政権下での売却手続きが最終段階に入った格好です。

一方で、1月20日に大統領就任を控えるドナルド・トランプ氏は、選挙中の公約として「政府が保有するビットコインは売却せず、国家の準備資産として活用する」と明言しており、まもなく退任するバイデン政権が急いでビットコインを現金化する動きは、トランプ氏の政策と真っ向から対立する可能性があります。

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押収ビットコインを巡る長年の法廷闘争

今回売却が承認された69,370ビットコインは、闇市場サイト「シルクロード」が米当局により閉鎖された際に押収されたものです。シルクロードは、ビットコインを利用した違法薬物や偽造品などの取引が横行していたことから、当時「暗号資産のダークサイド」を象徴する存在として取り沙汰されました。

この押収資産は、押収当時から数々の訴訟に巻き込まれてきました。特にBattle Born Investments社は、破産財産との関連を主張して「自社の所有権が認められるべきだ」と訴えを起こし、売却の差し止めを求めましたが、連邦裁判所や情報公開法(FOIA)訴訟の場でことごとく退けられました。同社が要求した“Individual X”と呼ばれる協力者の身元開示も認められず、最終的に最高裁判所が上訴を棄却し、政府による売却が正式にゴーサインとなったのです。

この訴訟結果に対して、Battle Born社の弁護士は「政府による民事資産没収プロセスの乱用だ。手続き上の策略を用いて真実を曖昧にしている」と強く非難しています。一方で、司法省側はビットコインの価格変動リスクを理由に「国として資産を安定確保できる状況にしておくべきだ」と、売却を正当化しています。

ビットコイン価格10万ドル超の中での大量売却

今回の売却は、ビットコイン価格が10万ドルを超える水準に達している(※執筆時点の想定)状況下で行われるため、市場に大きな衝撃を与える可能性があります。既に国内外の暗号資産コミュニティや投資家は、政府による「大口売り」が短期的な相場急落要因になると警戒を強めています。

  • 売却規模の大きさ
    69,370 BTCは市場価格で1兆円超。売却のタイミングや方法次第では、一時的に取引所の流動性を圧迫し、市場ボラティリティを高める恐れがあります。
  • 政府資産化のシナリオ
    ただし、トランプ氏が大統領就任後に売却を阻止し、国の準備資産としてビットコインを保有し続けるとなれば、今度はビットコインの「デジタルゴールド」的な地位がさらに強調されるかもしれません。市場参加者の一部からは「もし売却が止まり、国家レベルの保有が正式に確認されれば、ビットコインにとっては長期的な追い風だ」との声も上がっています。

トランプ氏の「ビットコイン超大国」構想とは?

トランプ氏は選挙戦で、米国を「ビットコイン超大国」にする計画を公約の目玉として掲げました。具体的には以下のような政策が想定されています。

  1. 政府によるビットコイン備蓄
    「押収したビットコインを売却せずに国家備蓄として保有する」というのは、その代表的な構想です。従来、金や米国債などが中心だった国家備蓄の一部にデジタル資産を組み込むことで、新興国や他国と差別化を図る狙いがあるとみられます。
  2. 暗号資産の規制緩和・環境整備
    米国内の暗号資産関連企業が活動しやすいよう、税制上の優遇やライセンス制度の緩和などの検討を示唆。これにより「米国が暗号資産・ブロックチェーン技術の世界的リーダーになる」というビジョンです。
  3. ビットコイン産業振興による経済活性化
    新技術関連の雇用創出や経済波及効果を重視。ビットコインや暗号資産の普及によって新しい産業形態が生まれ、経済成長のエンジンになるというシナリオも描いています。

このように、トランプ氏の政策は暗号資産業界から大きな期待を集める反面、「国家レベルでビットコインを保有し続けることが本当に得策か」「価格の乱高下リスクやセキュリティ確保の問題はどうするのか」など、慎重な議論も必要とされるでしょう。

今後の焦点:バイデン政権退任までの売却進展と政権交代後の方針

現時点では、バイデン政権が退任する1月20日までに、どの程度ビットコインの売却処理が進むかが注目されます。すでに最高裁から許可を得ているため、少なくとも一部の売却が早期に実行される公算が高いとみられます。ただし、短期間で1兆円相当を一括売却するとなれば市場への影響が大きいため、何回かに分割して売却する可能性も否定できません。

一方、トランプ氏が就任後にこの売却を「国益に反する」として差し止めを図るケースも考えられますが、法的手続きや連邦裁判所の判決が既に出ている点を考えると、政権交代だけで覆すのは簡単ではないとの見方もあります。もし差し止めが実現するならば、暗号資産コミュニティやビットコイン市場にポジティブな影響が及ぶかもしれません。

専門家の見方:国家保有・大量売却がもたらす未来

ビットコインが金と同様の「価値貯蔵手段」として認識され始めて久しい一方、国家が巨額の暗号資産を保有・売却することが市場にどのような長期的インパクトを与えるかについては、専門家の間でも評価が分かれています。

  • 市場安定性への懸念
    国家レベルの大量売却は価格急落のトリガーとなる可能性があり、「ボラティリティの高さ」は金融規制当局や投資家にとって依然として大きな懸念材料です。
  • デジタル資産時代の先駆けとしてのチャンス
    逆に、政府がビットコインを公式に備蓄する姿勢を強めれば、暗号資産が主流金融市場の一角を担う時代が一気に近づくとの指摘もあります。とりわけ「世界基軸通貨ドル」と「デジタルゴールド」ビットコインとの相乗効果が生まれる可能性があるとする見方もあります。
  • 規制のあり方
    トランプ政権下で大幅な規制緩和が進めば、暗号資産の進化を加速させる一方で、詐欺的ICOやマネーロンダリングなどのリスクが増加する懸念も。適切な規制と健全な産業育成のバランスをどう取るかが大きな課題となるでしょう。

まとめ

69,370ビットコインという巨額資産をめぐり、米国は政権交代期に前代未聞の売却劇を迎えようとしています。バイデン政権が早期の現金化を図る一方で、新大統領就任予定のトランプ氏は真逆の「保有」路線を掲げており、この大きな方針転換が実際にどのような影響をもたらすのか、今後の動きから目が離せません。

市場では、米政府の大量売却による短期的な価格下落への警戒感が高まる一方、もしトランプ政権が本格的にビットコインを国家備蓄として組み込むのであれば、「ビットコイン超大国」構想が現実化し、暗号資産市場に歴史的な転換点をもたらすとの期待も広がっています。いずれにせよ、この両者の駆け引きと米政府の動向は、これから数年にわたるビットコイン市場と暗号資産業界の行方を大きく左右していくことになりそうです。

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